失敗の本質

 

先日、30代の頃、一緒に仕事をした仲間と会う機会があった。
その時に「山喜さん、11月4日の新着情報で紹介していた失敗事例は筋の悪い失敗ですね。なぜ、そんな失敗例をオープンにしたのですか?成功事例の方を紹介した方が良いのではないんですか」と指摘があった。
前回、紹介した失敗事例は
「40代の頃、大手メーカーより材料メーカーを通じて成形品の開発案件の話があった。
数量が伸びていて現在、生産している成形メーカー1社ではリスクがあるので、もう1社供給先がほしいとの事であった。(中略)
量産開始まで想定以上の期間を要してしまった。その間に先行メーカーは設備投資をし、
生産数を上げ、当初の単価から大きく値を下げて納入していた。
それに加えて、既に市場での数量の伸びが止まってしまっていた。
初回の少量生産の後、社内会議で量産移行の中止が決定した。
この案件では会社に多大な損失を与えた。」という内容である。

私は成功事例を紹介しても環境が変わると役に立たないと思っている。失敗事例は常に本質的な部分が参考になると思っているので今回、失敗の本質について紹介しておきたい。

この失敗事例では本質的なミスが2つある。
まず一つは売上がほしいのでこのテーマを安易に着手してしまった事である。
当時、自社で製品設計を行い付加価値の高い成形品事業を立ち上げていたが、売上の伸びが少なく、大きな売上が見込める製品がほしかった為に本来の事業コンセプトとは異なる二番煎じの開発を手掛けてしまった。

もう一つは開発段階で想定外の状況が発生した際に中止の判断を出来なかった事である。
一緒に仕事をしている仲間に対して「絶対に成功させよう」と不退転の覚悟を示しているので自ら中止の判断をする事ができなかった。いわゆる「自分の欲」に勝てなかった。新規事業、新製品の開発中止の判断は大企業、中小企業を問わず難しい問題であるが、経験曲線(累積生産数とコストの関係)やPPM(製品ライフのフェーズ管理)などの手法を活用し、将来の市場価格などを予測し、事業性を期限毎に論理的に議論し判断する事が求められる。

この失敗事例ではテーマ着手の段階で「二番煎じで独創性がないと」役員会で指摘を受けたが「そこまで言うならやってみなはれ」と承認された。チャレンジを許容する社風で失敗してもリベンジをさせて人材を活かすというDNAが脈々と引き継がれている。
実際に私もこの大きな失敗の後、数年後には役員に昇進する事ができた。
この会社の役員会ではグループの創成期を担った重鎮の方々が出席されており、その方々から昔の数々のエピソードを聞かせて頂いた。話しはビジネスの基本に通じる貴重なもので大変、勉強させていただいた。人との出会いが人生を大きく左右するが、この会社を経験してなければ、58歳で独立起業するというバイタリティは生まれなかったと思う。
以上

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