技術力強化:名古屋プラスチック工業展に参加して

11月1日に名古屋で開催されたインターモールドに参加した。
展示が多かったのが「生産工程で得られる膨大なデータをもとに新たな価値を生み出す」
いわゆるIoT(Internet of Things)だった。
射出成形工程で得られる成形機からのデータ、成形品の検査情報などデータをもとに不良率の低減、予防保全につなげるという事である。トレーサビリィティについても担保する。その先には人間がデータをもとに行っている推論、学習をサポートして行くいわゆるAI(Artificial Intelligence)がある。

30年程前に、圧力センサー、温度センサー、ひずみセンサーを金型、成形機に設置し、得られたロギングデータから射出成形プロセスを研究した時代があった。    目的は当時、自社で開発し、使用していたCAEの利用技術を向上させ、成形品の開発に活かす事だった。
当時を振り返って学んだ事が2つある。

一つがCAEはものづくりをする上で、設計者、生産技術者、現場が情報を共有し、利用技術を蓄積していかないと十分な価値を生み出せないという事である。CAEでの予測と実際の結果に対する比較、考察、その積み上げが競争力に繋がると思っているが残念ながら十分に活用出来ている会社は少ないのが現状である。IoTが進化している今、自社に適した活用方法を考え競争力につなげるまたとない機会ではと思う。

もう一つは事業性の見極めが重要という事である。どんなに優れた技術を開発したとしても投資に見合うリターンが無いと失敗だという事である。リターンも一時的なものでなく将来性があるものでなければならない。適社性と事業戦略が重要となる。
このような事を後から振り返って強く思うようになったのはある開発案件での失敗の経験からである。皆さんのお役に立つと思うので紹介する。

40代の頃、大手メーカーより材料メーカーを通じて成形品の開発案件の話があった。
数量が伸びていて現在、生産している成形メーカー1社ではリスクがあるので、もう1社供給先がほしいとの事であった。スーパーエンプラで電池用部品であった。肉厚が薄い円筒形状で高い精度が要求され、1社しか量産化ができていないとの事だった。当時40代でプレイングマネージャーとしてやっていた私はすぐその開発を引き受けた。しかも量産している会社の倍の取り数に設定し、開発を行った。まずは各ホットノズルに各1個のキャビを製作し、連続成形し、不具合を修正した後、想定した取り数のキャビを製作し、成形テストを実施したのだがそこで困難な問題に直面した。連続成形中に不特定のキャビで離型時に製品の変形が発生し、規格外のものができる。
肉厚が薄いので金型の0.01レベルの偏心でも問題となる。円周方向の肉厚差で離型抵抗が不均一となる。また連続成形でのホットランナーのばらつき、成形機、金型動作の平行度なども影響する。

量産開始まで想定以上の期間を要してしまった。その間に先行メーカーは設備投資をし、生産数を上げ、当初の単価から大きく値を下げて納入していた。
それに加えて、既に市場での数量の伸びが止まってしまっていた。

初回の少量生産の後、社内会議で量産移行の中止が決定した。

この案件では会社に多大な損失を与えた。一緒に携わった仲間の苦労に対して報いる事ができなかった。

その当時の私はプレイングマネージャーと言えば聞こえが良いが、一人よがりの出来の悪いマネージャーだった。

それ以来、適社性と時間軸を強く意識するようになった。

自社が何を強みとして行くか、時間軸を意識したテーマへの取り組み、その為には、自社を客観的に見る事が求められる。

以上

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